クモをモチーフにしたタイタックです。
20世紀半ば頃、アメリカ製と推定します。

タイタック（Tie Tack）とは、ネクタイ用装飾品の一種。
生地の表側からピンを刺し、裏側をキャッチで留めます。

留め具についたチェーン先端のパーツをシャツのボタンに
掛けることで、飾り兼、ネクタイが動かないよう固定する
役割も担っているのです。

紳士的なアイテムにクモを題材とすることは、少々
ミスマッチに思えるかもしれません。
しかしながら人々は古代より、クモやその他昆虫等に
ポジティブな象徴性を見出し、装飾品として
身に着けてきました。

今作品は全体のつくり、リアルさとデザイン性のバランスから、
おそらく19世紀ヴィクトリア時代のジュエリーを
模したものと考えられます。

鮮やかな赤色の目は、ヴィクトリア女王も好んだガーネット。
小さな欠けは位置やセッティングを見るに
元々石自体にあったものでしょう。

頭胸の部分にはつやつやとした白いパールを用いています。
腹部はゴールド、微妙な色と光沢の変化は筋彫りの上から
施したエナメルの効果です。

足の角度や曲がり具合も一本ずつが微妙に異なり、
立体感も上手く表現されています。

作品を隅々まで見てみると、クモのモチーフに付随する
現代的な印象、例えば奇抜さや個性的といった
イメージよりはむしろ、歴史や上質さを大切に
作られていることが分かるのです。

ヴィクトリア時代には、男性だけではなく女性もまた、
同様のモチーフをジュエリーとして着用することが
流行していました。

チェーン先のパーツごとキャッチで固定すると、
ネクタイはもちろん、ジャケットの襟、スカーフ留めなど、
用途性別を限ることなくお楽しみいただけます。

年代　　1900年代中期
国　　　アメリカ
素材　　ガーネット パール 14金
サイズ　 約1.5cm×1.3cm（モチーフ部）

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