アンティークのリングです。
製作年代は19世紀後期から20世紀初頭頃、ヴィクトリアン、あるいは
エドワーディアンに入った頃の作品かと推測します。
ダイヤモンド五石を横並びに配した一文字リング 。
中央の一石にはオールドヨーロピアンカット、他四石にはそれにほぼ
近いカットが施されています。
オールドヨーロピアンカットは、現代の主流ブリリアントカットの
前身とされる、アンティークダイヤモンド特有のカットです。
その煌めきは華やかさもありつつ、しかしよりクリアで、より
緻密にキラキラと輝くことが良しとされる、現代の計算され尽くした
ダイヤモンドとは少々趣が異なります。
内包物の影響もあるのでしょう、どこか柔らかく、温かみのある
輝きが大変に魅力的です。
石の裏側の地金を開いたオープンセッティングのため、
オールドヨーロピアンカットの特徴の一つ、ルース裏側の通常尖った
先端がカットされた状態を、直接確認することもできます。
地金部分はイエローゴールド。
植物を思わせる渦巻文様風の台座は、当時のリングに好んで用いられた
デザインです。
ロマンティックで重厚感もあり、いかにもヴィクトリアンらしい
雰囲気ですが、実はホールマークからエドワーディアンだと判別できる
作品にも同様のモチーフを見ることは間々あります。
現代のファッション同様、ごく限られた一過性の流行ではなく
定番へと変貌を遂げるほど、当時の人々に愛される優れたデザインだと
捉えられていたのかもしれません。
ダイヤモンドを留める爪にもまた金色のゴールドを使用しており、
より一層クラシカルな印象が強まります。
一文字リングは時代を問わず愛され、長い期間に渡り製作され続けて
きました。
仮に19世紀前半、ジョージアン期の作品であればダイヤモンドは
ローズカットで地金はシルバー、石の裏側は金属で塞がれていたかも
しれません。
もしもう少し時代が下りアールデコ期頃であれば、ダイヤモンドは
さらに現代のカットに近く、地金はプラチナや、ホワイトゴールドも
使用されたことでしょう。
シンプルな姿の裏側に隠された、素材やデザインの流行、普及具合、
それらの大元となる時代背景等複雑な要素に思いを馳せつつ、
この時代ならではの一文字リングをお楽しみください。
少々摩耗していますが、"18CT" の刻印が確認できます。
年代 1800年代後期〜1900年代初頭
国 イギリス
素材 ダイヤモンド 18金
サイズ 約13.5号
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