アンティークのネックレスです。
1930年頃、アールデコ期の作品と推測されます。
ロイヤルブルーの背景は、シルバーの地金に細やかな模様を彫り、
半透明のエナメルを施すギロッシュ(ギョーシェ)エナメルと
呼ばれる技法を用いたもの。
エナメルの下に薄らと透ける波型の模様が、美しい青色を
さらに深く、表情豊かに見せています。
中央にはマルカジットの花々がこぼれるフラワーバスケット。
その強い光沢が、直線や鮮やかな色の対比を特徴とするデコの
趣向によく合ったからか、マルカジットはこの時代の作品に
好んで使用されています。
左右対称配置のお花や籠もアールデコらしいデザインです。
印象的なブルー、モチーフ、フレーム周りにあしらわれた
蝶結びと葉。
実は同様の要素を取り入れたジュエリーは、さらに百年以上
遡ったジョージアン期の作品にその姿を見ることができます。
ブルー地には当時流行したブリストルグラスを。
ベースやバスケットに花々を飾った "ジャルディネッティ" も
18世紀、19世紀初頭頃のジュエリーと関連付け記憶されている
方も多いかもしれません。
そして当時であればおそらく、時にメタリックにも思える
輝きを呈する、ローズカットダイヤモンドがきらりきらりと
煌めいていたのでしょう。
貴重な素材に彩られたジョージアン期の作品は大変に豪華で
魅力的ではあるものの、ごく一部の富裕層を対象とした
いわば限定品です。
アールデコ期、1920〜30年代頃といえば、女性の社会進出が
広がりを見せる時期と重なります。
過去からインスピレーションを受けつつ時代に即した
素材やデザインでアレンジを加え、多くの人々が楽しめる
姿へと変貌を遂げた作品は、まさにその自由な時代の象徴と
いえるのかもしません。
裏側にシルバーを示す "935" の刻印があります。
年代 1930年頃
国 オーストリア(推定)
素材 マルカジット エナメル シルバー
サイズ チェーン長さ約40cm モチーフ約2.7cm×3cm
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