エジプシャンリバイバルのネックレスです。
1920年代頃製と推測されます。
エジプシャンリバイバルジュエリーとは、古代エジプトを
モチーフに製作されたジュエリーの総称です。
19世紀の作品にも見ることができますが、20世紀に入り、
ツタンカーメン王墓の発見、発掘によりそのムーブメントの
盛り上がりは最高潮に達したといえるかもしれません。
ツタンカーメン王の墓が発見されたのは1922年。
当時美術、工芸界を席巻していたのはアールデコ様式でした。
直線を多用しコントラストの効いた色合いを好むこのスタイルと、
発掘された壁画や装飾品から、現代においても十分に伝わる
古代エジプトの鮮やかな色彩感覚とはとても相性が
良かったのだろうと推察できます。
こちらのネックレスは三種類のモチーフから成っています。
トップには「有翼のスカラベ」。
古代エジプトでは神ともされた甲虫スカラベを、ダークカラーの
ラピスラズリで象っています。
スカラベが運ぶ玉=太陽は艶やかなホワイトパールで表現。
二つ目のモチーフは「有翼の蛇」。
おそらく下エジプトの守護神である女神でしょう。
ツタンカーメン王のマスクにも蛇女神の姿を見ることができます。
三つ目は「ロータス」、スイレンです。
再生や生命の象徴とされるロータスは、古代エジプトに関わる
あらゆる箇所で目にするモチーフです。
古代エジプトの代表ともいえる、あまりにエジプトらしい
三種のモチーフ。
しかしどこかヨーロッパ風の洗練された優雅さも
持ち合わせているのは、それぞれにプリカジュールエナメルを
用いているからなのでしょう。
裏側を金属で覆わず、ステンドグラスのように光を通す
プリカジュール。
青味の強いパープル〜明るいグリーンのカラーグラデーションと
半透明の柔らかく、滑らかな質感を際立たせる特有の見え方が、
優しく華やかな西洋風の趣を付け加えているのです。
美しいジュエリーとして、また異なる時代や文化の融合を
直接肌で感じることのできる貴重なアイテムとして、非常に
収集価値の高い作品です。
スカラベ片翼エナメルの少々のひびは、細工の構造と
現代に至るまでの長い年月を踏まえると、最小限といえる
ダメージ範囲だと考えます。
モチーフ裏側に "STERLING" の刻印あり。
年代 1920年代〜1930年代頃
国 ヨーロッパ(推定)
素材 シルバー エナメル ラピスラズリ パール
サイズ 長さ約43cm
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