アゲートを使用したカメオのブローチです。
19世紀後期頃の作品と推測されます。
縞模様のアゲート(メノウ)に描かれた女性の姿。
赤味を帯びた深いコーヒー色が、乳白の層と重なって柔らかく
上品なブラウンカラーの背景となり、凛とした白色の人物が
くっきりと浮かび上がります。
優しげな目元、すっと通った鼻筋、ほころんだ口元の美しい女性。
象徴物等を携えていないことから、カメオの題材として好まれる
神話の女神や高名な個人ではなく、おそらくどちらかの貴婦人なのでしょう。
カールした巻き毛、イヤリング、ドレスのひだも細かく丁寧に
描かれ、結い上げた髪のボリューム、正面から見た時に最も前方に
くる肩辺りの高さも、厚みを彫り分けて巧みに表現しています。
カメオの良さもさることながら、こちらのブローチはフレームが
少々特徴的です。
硬質で滑らか、品格の漂うストーンカメオには、華やかなゴールドの
フレームを合わせた作品を多く見かけますが、こちらには
アゲートの色味とバランスが取れた、渋みのあるシルバーを
用いています。
そしてカメオ周りの装飾が大胆なアシンメトリーであることも
ポイントです。
カメオのフレームといえば、額縁のように周囲を均等に、
シンメトリー(左右対称)に縁取る作品がより一般的ではないでしょうか。
花の中央には愛らしい変形パールを、葉の一枚一枚には不揃いの
小さなパールをセットしたデザインも洒落ていて、エレガントな
印象のストーンカメオに、あえてファッショナブルな要素を
色濃く纏わせたようにも見えるのです。
ブローチ針受け具の刻印は、フランス製シルバーを示すマークの
可能性もありますが、摩耗のため正確な判別が難しい状況です。
オーストリア近辺のジュエリーにも似た独特の雰囲気も感じられます。
アゲートの縁に僅かなチップが見られますが、作品全体の
クオリティーに影響はない程度と考えます。
年代 1800年代後期
国 ヨーロッパ
素材 アゲート パール シルバー
サイズ 約4.5cm×2.8cm
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