20世紀半ば頃、オーストリア製のブローチです。
ローズクォーツで丸みのあるお花を象っています。
アップルブロッサムを思わせる、愛らしい薄紅のフラワーモチーフ。
驚くことに、複数の独立した花びらを集め留めているのではなく、
ひと塊のローズクォーツから花全体を一つの姿として取り出し、
そこからさらに花びらの細かい部分まで手彫りで表現しているのです。
花の厚みは2、3ミリから、箇所により5ミリ以上にもなるでしょうか。
厚さを彫り分けることで色の濃淡を演出、ある部分は乳白がかり、
ある部分は透明感が強調され、加えて天然石特有の内部の自然な模様や
ひび割れも相まって、同じピンク色でも全く異なる表情を見せています。
お花の形はころんとしたボウル型で、その見事なカーブと立体感は
とても後から人の手で与えられたものだとは思えないほどです。
硬質の素材であることを忘れてしまうくらい柔らかな花びらの描写からも、
高い技術力と美的感覚を持つ職人が製作に携わっているだろうことが
推測できます。
グリーンの葉にはネフライトを使用しています。
ネフライトは軟玉、硬玉であるジェダイトと共に、 "ジェイド(翡翠)"
と呼ばれる天然石です。
一筋一筋丁寧に刻まれた葉脈、縁のぎざぎざ、波打つような形状。
渋みのある色合いも、少々くすんだピンクのお花とのバランスを
考えての選択でしょう。
樹皮の凹凸までリアルに伝わるゴールドの枝もまた、作品の出来栄えを
より高める役割を担っています。
裏側に"585(14金)"とメーカー名と思われる刻印があります。
花びらの縁に小さな欠けが見られますが、作品の完成度には影響しない
程度と考えます。
年代 1950〜1960年代頃
国 オーストリア
素材 ローズクォーツ ネフライト 14金
サイズ 約6.5cm×5.5cm
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