1800年代中期頃製の、緻密で美しいシェルカメオです。
上品なブラウンを背に白く浮かび上がる姿は、
ギリシャ神話の女神、プシュケーと考えられます。
アフロディーテが嫉妬し、その息子エロースを虜にする程の
美貌を誇る女神です。
穏やかな表情や結い上げた巻き髪、滑らかな肌など女性的な
魅力を強調するアップの横顔ではなく、あえて全身に
近い形で描いていることから、対象の背後にあるストーリー
すべてを題材にした、作者の絵画的な視点がうかがえます。
元は人間の王女であったプシュケーが、紆余曲折を経た後
晴れて女神となり、愛するエロースの住む天界へ迎えられる。
そんな神話の一シーンを表現しているのでしょう。
空間を生かした浮遊感のある構図、細やかな彫りや微妙な
透かしの技術も素晴らしく、雲や薄衣だけでなく、喜びに溢れる
女神の心の軽やかさまでもが伝わってくるようです。
渦を巻くゴールドのフレームもまた、作品のロマンティックな
印象を引き立てます。
ピン部分が後年に付け替えられています。
年代 1800年代中期
国 イタリアまたはイギリス
素材 シェル ゴールド
サイズ 約6cm×5.3cm
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